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テレホンメッセージ「聖書の人間理解」(45)旧約聖書創世記第6章を読みながら、聖書の人間理解についてお話ししています。第6章から第8章にかけては、いわゆる「ノアの箱舟」の話が語られています。「ノアの箱舟」の話というのは、別の言い方をすれば、大洪水の話です。大洪水によって、全ての地が水で覆われてしまい、人間も、動物も、全ての生き物が死んでしまった。その中で、箱舟に乗った者たちだけが救われたのです。このような、洪水物語、箱舟の物語は、聖書の中だけにあるものではありません。聖書よりももっと古い、メソポタミア地方の伝説を伝える「ギルガメシュ叙事詩」に、似たような話があるのです。また、考古学的にも、この地方に昔大洪水があったことを示す地層があるということです。つまりこの物語は、実際にあった大洪水の記憶にいろいろな脚色がついて生まれたものでしょう。「ノアの箱舟」の話は、このメソポタミア地方の洪水物語をもとにして書かれたのです。
このように、この話は聖書から生まれたものではないのですが、聖書に記されている「ノアの箱舟」の物語には、聖書の信仰、聖書の人間理解が貫かれています。そのことはどこに現れているかというと、この大洪水が、人間の罪に対する神の怒りによって起こっているということ、またノアとその家族が箱舟に乗って洪水から救われるのも、ノアの機転とか知恵によることではなくて、同じ神の恵みによることである、という点です。つまりこの話は、神様による審きと、また同時に神様による救いの話として語られているのです。そのことが、6章5〜8節に語られているので、読んでみます。 洪水は、人間の心が悪、罪に満ちているのを見た神が、人間を造ったことを後悔されたことによって起こった。しかしその人間たちの中で、ノアだけは神の恵みを得た、これが「ノアの箱舟」の話の骨子です。そこに語られている信仰の内容について、この後さらに詳しくお話ししていきたいと思います。
牧師 藤 掛 順 一 |
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