富山鹿島町教会
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テレホンメッセージ

「聖書の人間理解」(41)

 旧約聖書創世記第4章の「カインとアベル」の物語から、「聖書の人間理解」についてお話ししています。カインは、嫉妬のために、弟アベルを殺しました。彼は人類最初の殺人者となったのです。そのカインに神様が語りかけられます。9節以下を読んでみます。
「主はカインに言われた。『お前の弟アベルはどこにいるのか』。カインは答えた。『知りません。わたしは弟の番人でしょうか』」。

 「お前の弟アベルはどこにいるのか」というのは、お前が共に生きるべき隣人はどこにいるのか、ということです。その隣人を殺してしまったカインは、「知りません」と答えるしかありません。「共に生きている相手のことなんか知らない。俺はあいつの番人じゃない」それが、殺人を犯したカインの言葉です。そのような思いは、実際に人を殺さなくても、人に対する嫉妬、憎しみを覚える時に私たちがいつも抱くものなのではないでしょうか。

 神様はそのカインにこう宣言されます。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる」。

 これが、カインの罪に対して与えられた罰です。彼は、神様の自分に対する扱いを不満に思い、アベルの方が神様に重んじられていることに嫉妬して弟を殺しました。つまりそれは神様への反逆だったのです。そのカインは、当然、神様の祝福を失い、呪われる者となり、神様の造られたこの世界において安息の地を失い、地上をさすらう者となるのです。カインは絶望して叫びます。「私の罪は重くて負いきれません。今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう」。神様の祝福、守りを失ってしまえば、人はもう生きていけない。そういう人間の本質にカインは気づきました。カインはここで初めて、自分の罪の重大性に気づいたのです。

牧師 藤 掛 順 一

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