富山鹿島町教会

トップページ最新情報教会案内礼拝メッセージエトセトラリンク集
←戻る 次へ→
.

「ナルニア国物語」について 第36回

6.「魔術師のおい」(1)

 牧師 藤掛順一


 第六巻「魔術師のおい」に入ります。この物語は、ナルニアの言わば「創世記」です。ナルニア国が生まれたいきさつを語っています。私は、この巻におけるルイスのファンタジー構成力、想像力はすばらしいものであると思います。「ナルニア国物語」の中の傑作の一つです。
 この巻の主人公は、ディゴリーという少年とポリーという少女です。二人は、一九世紀の終り頃のロンドンに住んでいました。つまり人間の世界においても、最も古い時代設定になっているわけです。ディゴリーの父はインドに行っており、母は病気で死にかけていました。彼と母はロンドンのおじさんとおばさんの家にあずけられているのでした。おじさんはアンドルーという名でしたが、大変変わり者で、おばさん(おじさんの奥さんではなくて妹)はディゴリーに、屋根裏のおじさんの書斎には絶対に行ってはいけないと言っていました。
 ディゴリーとポリーの住む家は長屋で、隣りどうしでした。長屋の屋根裏はつながっています。ある日彼らは、屋根裏を探検していて、間違って、アンドルーおじの書斎に入ってしまいました。書斎の机の上には、黄色と緑の指輪が何対か置かれていました。アンドルーはポリーに、黄色い指輪を一つあげようと言いました。とても美しい指輪だったので、ポリーはその一つを手に取りました。その途端、ポリーの姿がかき消えてしまったのです。
 「ポリーに何をした」とつめよるディゴリーに、アンドルーおじは、「別の世界に送り出したのだ」と言います。そして指輪の秘密を説明しました。その指輪は、「別の世界の土」から作られたものだったのです。アンドルーはそれを手に入れ、様々な魔術を学んでその指輪を作り上げたのです。つまりアンドルーは魔術師なのでした。「魔術師のおい」の「おい」とは「甥」です。つまりそれはディゴリーのことなのです。アンドルーの言葉によれば、黄色い指輪はこの世界から別の世界へ行くためのもの、緑の指輪はこの世界に帰ってくるためのものなのです。しかしポリーは緑の指輪を持っていません。このままではポリーはこの世界に帰れないのです。それがアンドルーの計略でした。彼はディゴリーが、緑の指輪を持って別の世界に行かざるを得ないようにしたのです。彼は自分で行くつもりはありません。自分で危険を犯す気はないのです。ディゴリーはおじの卑劣さに怒りつつも、仕方なく緑の指輪を二つポケットに入れ、黄色い指輪を手に取りました。そのとたん、アンドルーおじも書斎も消え去り、気がつくと彼はある池から地面へとはい上がろうとしていました。しかし体は全く濡れていませんでした。
 その池は直径三メートルぐらいで、林の中にありました。その林は、鳥も、虫も、けものもいない、風すらもない、あくまでも静かな林でした。そして彼が出てきたのと同じような池が周囲に沢山ありました。ディゴリーは、自分がどうやってここに来たのかをほとんど忘れてしまいました。この林の持つ豊かさと静けさに心が満たされてしまっていたのです。そこは、「何事もおこらないくせに、けっしてたいくつしない」所でした。すぐそばにポリーが横になっていました。彼らはお互いにしばらく相手のことを思い出せませんでしたが、話をしているうちにだんだんに全てを思い出しました。そして二人はもとの世界に帰ろうとします。それには、彼らが出てきたその池に飛び込めばよいはずです。二人は手をつないで飛び込みました。しかしバシャンと水をはねただけでした。池の水は五、六センチの深さしかありませんでした。その時ディゴリーは気づきました。彼らはまだ黄色の指輪をしたままだったのです。もとの世界に帰るためには、緑の指輪をしなければなりません。彼らは指輪をつけかえ、池のふちに立ちました。その時ディゴリーは、あることを思いついたのです。この池が自分たちの世界への通路だとしたら、他に沢山ある池は別の世界につながっているのではないか。それなら、自分たちの世界に帰る前に、別の世界を少し見てみるのもよいのではないか…。ディゴリーはとても好奇心の強い子供だったのです。ポリーは、それもいいが、先ずは緑の指輪でちゃんと元の世界に帰れることを確かめてからにしたいと言います。そこで彼らは緑の指輪をはめて池に飛び込み、もとの世界が見え始めたら指輪を黄色に変えてここに戻ってくることにします。その試みは成功しました。林に戻った彼らは、いよいよ別の池に、黄色の指輪をはめて飛び込みました。別の世界に行く時の指輪は黄色、と聞かされていたからです。しかし水をはねただけでした。それで今度は試しに、緑の指輪をはめてやってみることにしました。実は、アンドルーおじもわかってはいなかったのですが、あの指輪は、この林の土からできていたのです。この林は「世界と世界の間の林」でした。そこは「世界」ではありませんから、何も起こらず、ただ静けさだけが支配しているのです。そして黄色の指輪はこの林に引き込む力を、緑の指輪はこの林から外へ出る力を持っていたのでした。緑の指輪をはめて別の池に飛び込んだ二人は、今度こそ全く別の世界に行くことになったのです。そこで二人を待ち受けていたのは何だったのでしょうか。
         
←戻る 次へ→