富山鹿島町教会

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「ナルニア国物語」について 第10回

2.「カスピアン王子のつのぶえ」(2)

 牧師 藤掛順一


 ある晩のこと、カスピアンはコルネリウス博士に起こされます。彼はカスピアンに、この城から逃げ出すように言います。おじのミラースが彼を殺そうとしていると言うのです。それは、ミラースに男の子が生まれたからでした。ミラースはカスピアンの父、カスピアン九世を殺して王位を簒奪したのです。自分に子供がない間はカスピアンに王位を譲るつもりでしたが、今はもうカスピアンが邪魔な存在になったのです。 コルネリウスは別れ際にカスピアンにつのぶえを渡しました。それは、吹けば不思議な助けが来ると言われている、スーザン女王の魔法のつのぶえでした。カスピアンは城を抜け出し、夜の森をひた走りました。嵐になり、落雷で倒れた木に打たれてカスピアンは気を失ってしまいました。
 気が付くと彼はほら穴の中のベッドに寝かされていました。そこには、もの言うアナグマと、二人の小人がいました。カスピアンはついに、隠れ住む「もとナルニア」のひとびとと出会うことができたのです。アナグマの名は「松露とり」、小人はトランプキンとニカブリクでした。ニカブリクはカスピアンのことを疑い、特に彼が王子であることを知ると、殺してしまえと言います。それに対して松露とりはこう言います。「きみたち小人というものは、人間と同じに忘れっぽくて、うつり気だぞ。わたしはちがう。わたしはけものだ。そして、とりわけアナグマなのだ。わたしたちは、心を変えたりせぬ。いつも同じ心をもちつづける。わたしは、ここからきっとよいこと、この上なくよいことがひらけてくると思う。わたしたちのところにおられるのは、ナルニアのまことの王だ。まことの王が、まことのナルニアにもどられたぞ。小人たちは忘れようが、わたしたちけものはみな、おぼえているぞ。ナルニアには、アダムのむすこが王さまにならないかぎり、うまくいなかいのだ。」
 トランプキンが「人間にこの国をやろうというのか」と問うと、松露とりはこう言います。「これは、人間の国ではない。だが、人間が王たるべき国だ。わたしたちアナグマは、そのことを長いあいだおぼえてきている。どうだ、一の王ピーターは、人間ではなかったかな?」「あんな昔話を信じてるのか?」とトランプキン。「いいか、わたしたちは、心変わりはしないんだ。わたしたちけもののなかまは、な」と松露とりがいいました。「わたしたちは忘れたことがない。一の王ピーターそのほかの、ケア・パラベルで国をおさめられたかたがたを信じ、アスランそのかたをかたく信じている。」「それほど、かたくといったって、今、この時代に、アスランを信じてる者があるかよ?」とトランプキン。
 ここに、「カスピアン王子のつのぶえ」の大切な主題が語られています。それは「信じ続ける心」です。アスランによる白い魔女の支配からの救い、ピーターたち四人の王による黄金時代は、もう何百年も昔のことであり、今はそれとは全く違う時代になっているのです。そもそもそんなことが本当にあったのかどうかさえも、疑わしく思えるのです。またたとえ昔はそうだったとしても、そのアスランが今もおられ、救い、恵みを与えてくれるとは思えない厳しい現実が目の前にあるのです。そのような目に見える現実の中で、伝えられてきたアスランの存在、その救いを固く信じて生きる、心変わりしない信仰、それがこの第二巻のテーマなのです。
 松露とりと小人たちはカスピアンを、隠れ住んでいる「もとナルニア」の者たちに引き合わせます。カスピアンを王としていただく「もとナルニア」の群れが形成されていくのです。彼らが今後のことを話し合うために森の中で会議を開いている時、そこにコルネリウス博士がやってきます。コルネリウスは、ミラースがカスピアンと「もとナルニア」の者たちの動きを察知し、彼らを滅ぼすために攻めてこようとしていることを告げました。そこで「もとナルニア」の者たちは、「アスラン塚」に立てこもることにします。「アスラン塚」というのは、昔の「石舞台」です。ピーターたちの時代の後、そこに山が築かれ、その中に地下室やトンネルが掘られていて、立てこもるには最適の場所となっているのです。またそこは、あの石舞台の上でのアスランの犠牲の死とよみがえりの場所であり、ナルニアの歴史において、最も意味のある場所でもあるのです。
 彼らが「アスラン塚」に入るとすぐに、ミラースの軍勢がそこを取り囲みます。何度かの戦いによって、「もとナルニア」軍は次第に追い詰められていきます。カスピアンたちは、いよいよあのスーザン女王の魔法のつのぶえを使う時が来たと判断します。必ず不思議な助けが来るというつのぶえです。その助けとは、アスランその人が来て下さるのかもしれないし、ピーターたち四人の王が現れるのかもしれません。その助け手を迎えるために、いくつかの重要な場所に使いを送ることになります。海辺の、ケア・パラベルの城跡へ遣わされたのがトランプキンでした。彼は途中でテルマール人に捕えられ、あのボートで殺されそうになったのでした。
 このトランプキンの話によって、ピーターたち四人がどうしてナルニアに来ることになったかがわかりました。彼らをナルニアへと引き寄せたのは、スーザンの魔法のつのぶえだったのです。  
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