富山鹿島町教会

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「ナルニア国物語」について 第42回

6.「魔術師のおい」(7)

 牧師 藤掛順一


 次にアスランは、動物たちの中から何人かを選び出して会議に招きました。それはナルニアを安全に守るための会議でした。「この世界が生まれてまだ五時間たらずというのに、すでに悪がこの世界にはいりこんだのだ」というのです。
 さて、アスランによってもの言うけものへと選び出された者たちの中に、ディゴリーたちと一緒にこの世界にやって来たあの馬車屋の馬も入っていました。馬車屋はその馬に語りかけます。イチゴという名のその馬は、アスランが自分をもの言う馬にしてくれる以前のことを忘れていましたが、次第にはっきりと思い出してきました。「住みにくい、ひどい国だった」とイチゴ。「草はなし、かたい石ばかりで。」「そうとも、きょうでえ、そのとおりだったよ!」と馬車屋。「住みにくい世界だっただ。おらはいつも、あの敷石ちゅうもんは馬にはよくねえといっとっただ。あそこが、つまりロンドンてとこだよ。おらだって、おまえにおとらず、あんなとこはすきでねえ。おまえは田舎馬、おらも田舎もんだ。くにでは、聖歌隊にへえってうたってたもんだよ。だが、くににいちゃ、おまんまがたべられなかっただ。」馬車屋の人となりがこの言葉に表れています。
 ディゴリーはイチゴの背に乗せてもらって、アスランと動物たちが会議を開いている所に連れて行ってもらいました。お母さんの病気を治す魔法のくだものをくれるように頼むためです。ディゴリーが彼らの所に着くと、アスランは動物たちに「これが、今話したことをしでかした男の子だ」と言いました。
「おやおや。」とディゴリーは思いました。「ぼくが何をしたというんだろう?」「アダムのむすこよ」とライオンがいいました。「悪い魔女が、新しいわがナルニアの国にはいりこんでいる。心ただしいこのけものたちに、魔女がここにきたわけを話してやれ。」あれこれとさまざまないいわけが胸のなかにひらめきましたが、ディゴリーもばかではありませんから、ありのままをこたえることにしました。「ぼくがつれてきたのです。アスラン。」ディゴリーは低い声でこたえました。「なんの目的で?」「ぼくは、あいつをぼく自身の世界からあいつの世界にもどしたいと思ったのです。それで、あいつのもと住んでたところにつれ帰ってるものとばかり思ってました。」「ではどのようにして、あれはあなたの世界にいったのかね?アダムの子よ。」「それは―魔法でです。」ライオンが何もいいませんので、ディゴリーは、じぶんのいいかたが十分でなかったことがわかりました。「ぼくのおじのせいです。アスラン。」とディゴリー。「おじが、魔法の指輪でぼくたちをぼくたちの世界から送りだしたのです。ともかくぼくは、おじがポリーをさきにやってしまったので、どうしてもいかなければならなくなったのです。それからぼくたちは、チャーンというところで、魔女に出あいました。そしてあいつはぼくたちをつかんで―」「魔女に出あった、のかね?」アスランは低い声でいいました。今にもうなり声に変わりそうな感じです。「あいつが目をさましたのです。」ディゴリーはあさましくもそういってしまいました。それから、まっさおになっていいなおしました。「つまり、ぼくがあいつの目をさましたのです。鐘をうったらどうなるか、知りたかったのです。ポリーはいやがりました。ですからポリーは悪くないんです。ぼくは―ぼくは、ポリーとけんかしてしまいました。あんなことしていけなかったと思います。ぼくは、鐘の下に書いてあった文句に魅せられてしまったのだと思います。」「そう思うのかね?」とアスランはたずねましたが、やはり、とても低くて深い声でした。「いいえ」とディゴリー。「魅せられてなんかいなかったことが今になるとわかります。魅せられたふりをしてただけです。」
 ナルニアが生まれて五時間足らずで、すでに悪がこの世界に入りこんだ、というのは、あの魔女のことだったのです。そしてその悪は、アダムの息子であるディゴリーによってもたらされたものだったのです。アダムの罪によって悪がこの世にもたらされた、という「原罪」がここに描かれています。ディゴリーは、ナルニアにとってのアダムになってしまったのです。
   
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