富山鹿島町教会

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「ナルニア国物語」について 第22回

4.「銀のいす」(2)

 牧師 藤掛順一


 ジルはアスランから、一つの「仕事」をいいつかりました。それは彼女とユースチスの二人に与えられる仕事でしたが、ユースチスが崖から落ちて、ナルニアに先に送られてしまったために、彼女が一人でそれを聞くことになったのです。その仕事とは、行方不明になっているナルニアの王子を捜し出して連れ帰ることでした。その手掛かりとしてアスランは四つの「しるべのことば」を教えました。
「さがしにいくさいに、あんたをみちびくいくつかのしるべがある。その第一は、男の子ユースチスが、ナルニアにつくやいなや、むかしなじみの親友に出会うだろう。ユースチスは、ただちにその友だちに挨拶をしなければならない。すぐ挨拶をすれば、あんたがたは、よい助力をうることになろう。第二に、あんたがたは、ナルニアから北方へむかって旅をして、むかしの巨人族の都のあとにいかなければならない。第三に、そのくずれた都のあとで、ある石の上の文字を見つけるのだ。そしてその文字のつげることをはたさなければならない。第四に、その旅の途中で、わが名アスランの名にかけて、あんたがたに何かしてくれとたのむ者にはじめて出会うだろうが、それによって、あんたがたは、ゆくえ不明の王子をその人とみとめることができるだろう」
アスランはジルにこの「しるべのことば」をよく覚えさせ、崖のふちからナルニアへと吹き送りました。アスランが最後に言ったのはこういうことでした。「あんたがここで教わったしるべは、あちらでそのしるべの一つ一つに出会っても、それらしく見えるとあんたが思いこんでいるようには、ぜったい見えないだろう。だからこそ、そのしるべを心で知って、見せかけにはだまされないことが、とても大切なのだよ。しるべを思い出せ。そしてしるべを信じなさい。そのほかのことはかまわない。では、イブのむすめよ、さらば」
ジルはアスランの息に乗って空中を飛び、ナルニアへと向かいました。彼女が着いたところは、ある川の河口にある城で、その傍らの港から、一艘の美しい舟が船出しようとしているところでした。今まさにその船に、たいそうなお年寄りが乗り込もうとしていました。岸壁では皆がその年老いた王の船出を見送っていますが、誰もが王をいたわしそうに、心配している様子でした。
ジルはユースチスを見つけると、急いで声をかけました。「スクラブ、いそいで!あすこに、知ってる人、いない?」。しかしユースチスには何のことかわかりません。ジルがアスランに出会い、指示を与えられたことを彼が理解するのには少し時間がかかりました。それにユースチスは、見回してみても自分の知っている人などどこにもいないと思いました。そうこうしているうちに、年老いた王を乗せた船は出港していきました。
その時ユースチスとジルのもとに、一羽のフクロウが舞い降りました。フクロウは、彼らが空中を飛んで来たのを見ていたのです。ユースチスは「ぼくたちは、アスランから送られた者です」と言い、ジルは「いなくなった王子をさがしに送られてきたんです」と言いました。フクロウはそれを聞いて驚き、摂政のところに案内すると言います。その時フクロウが教えてくれたのは、今船出した年老いた王はカスピアン十世であるということでした。それを聞いたとたん、ユースチスはショックを受けました。あの年老いた王は、彼が「朝びらき丸」で共に航海したあのカスピアンだったのです。彼はナルニアに着いたとたんに、昔の親友を見たのでした。しかしナルニアと人間の世界との時の流れ方の違いのために、それと気づかなかったのです。アスランの教えてくれた四つのしるべの第一を彼らはこうしてやりそこなってしまったのです。
摂政とは、小人のトランプキンでした(第二巻「カスピアン王子のつのぶえ」参照)。しかし彼ももうかなり年をとり、耳も遠くなり、話が通じません。とりあえず彼らはケア・パラベルの城に招き入れられましたが、その夜、あのフクロウが彼らを連れ出しにきました。彼らはフクロウの背中に乗って、フクロウたちの会議の場へと連れていかれました。フクロウたちが言うには、摂政トランプキンは、彼らが行方不明の王子を捜しに行くことを許さないだろうとのことでした。これまでに何人もの騎士たちが王子を捜しに行ったきり行方不明になっているので、王はもう王子を捜すことを禁じていたのです。トランプキンは生真面目一点ばりの人なので、今度ばかりは例外であることを理解できないだろうと言うのです。だから彼らは、摂政の助けを受けることはできない、自分たちだけでこの仕事をしなければならないのです。これが、第一のしるべをやりそこなった結果でした。 フクロウたちが話してくれた、王子が行方不明になったいきさつはこのようでした。十年ほど前、王子(その名はリリアンです)とその母、つまりカスピアン王のお妃(この人は、カスピアンがあの「朝びらき丸」の航海において、「この世の果ての始まりの島」で出会ったあの美しい娘でした)は、ナルニア北部へ花つみに出かけましたが、王妃はその時緑の大蛇にかまれて死んでしまいました。リリアン王子は母の仇を打つため、北方の森に大蛇の姿を求めて通いましたが、ひと月ほどすると、王子の様子がおかしくなりました。王子は、母が蛇にかまれた場所で、緑の衣を着た美しい女性が自分を手招きしているのを見たのです。彼は復讐を忘れ、その女性の姿を求めて森へ通っていたのでした。そしてある日、王子は森へ出かけたまま忽然と姿を消してしまいました。「きっと、蛇とその女とは同じものなのよ」とジルが言いました。リリアン王子はこの女(魔女)にどこかで捕えられているのです。
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