富山鹿島町教会

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「ナルニア国物語」について 第16回

3.「朝びらき丸東の海へ」(3)

 牧師 藤掛順一


 ユースチスは、竜の宝ぐらだったほら穴で、竜のような欲ぶかい心をいだいて眠り、自分が竜になってしまいました。腕の痛みで目が覚めたのは、眠る前に肘の上にはめていた腕輪が、竜の前脚には小さすぎてくいこんでいたからでした。「痛いことは痛かったのですが、はじめに感じたのは、まずほっとした気もちでした。もうこわがるあいてはありません。今はじぶんがだれからもこわがられるもので、勇ましい騎士ででもなければ、じぶんにかかってくる者はいないのです。今ならカスピアンやエドマンドでさえ、やっつけることができます。でもユースチスがこう考えたとたん、かれらをやっつけたくないことがわかりました。友だちでいてもらいたかったのです。人間たちのあいだに帰って、しゃべったり笑ったり、何でもいっしょにしたかったのです。ところが、はっきりと今、人間ときりはなされた怪物になったことがわかりました。ぞっと身にしみるさびしさが、おそってきました。ユースチスはようやく、ほかの人たちがけっして鬼でなかったことが、わかりかけてきました。そしてじぶんが、いつもそう思いこんでいたようなりっぱな人物だったろうかと、あやしみだしてきました。あの人たちの声がききたくてたまりませんでした。」
 ユースチスは浜辺のみんなのところへ、空を飛んで行きました。しかし人間たちは、突然竜が飛んできて、自分たちと朝びらき丸との間に降り立ったので大さわぎになりました。朝になって、彼らが竜と戦おうと隊列を整えて迫っていくと、ユースチスは必死に首をふって、戦うつもりのないことを示そうとしました。ルーシィは竜の前脚にくいこんだ腕輪に気づき、この竜はそれを直してもらいたくて来たのかもしれないと言いました。ルーシィがあの魔法の薬(第一巻でサンタクロースにもらったもの)で傷を直そうとした時、カスピアンはその腕輪が、ミラースに追放された七人の貴族の一人、オクテシアン卿のものであることに気づきました。「『あんたは、オクテシアン卿ですか?』とルーシィが竜にききました。するとそれが、悲しそうに首をふりました。『では、だれかに魔法をかけられたの?ええと、あんたが人間で、ということよ』。それは、はげしくうなずきました。そこでその時に、ふとだれかがこうたずねました。『まさか、まさか、ユースチスじゃないでしょうね?』。するとユースチスは、おそろしい竜の首をこくこくとうなずいてみせ、海にひたした尾をばしゃばしゃふりました。みんなは、竜の目からざあざあ流れ出るはげしい、にえくりかえった涙をさけようとして、とびさがりました。」こうして、みんなに、その竜がユースチスであることがわかったのです。
 「そののち、だれの目にも明らかになったのは、ユースチスが、むしろ竜になって、性質をいれかえてよくなったということでした。ユースチスは、みんなの力になろうといっしんにつとめました。かれは、島じゅうとびまわって、ここはどこもかも山で、野生のヤギと野生のブタのむれしか住んでいないことを見つけてきました。そしてむれのなかから、船の食料として、たくさんつかまえて、運んできました。…またある日は、ゆっくりと、くたびれながらも、自分の手柄をほこらしく、空をとんで、野営地に大きな松の木をもち帰ったことがありました。その大木を遠い谷で根ごとひきぬいて、中心になるマストにするためでした。また夜になって、雨がひどくふったあとによく寒くなった時などは、竜がみんなのよりどころになりました。というのは、そんな時、船の全員が、その暖かいおなかに背中をもたせかけてすわりますと、ちょうどよくあたたまって、からだがかわきました。竜のはげしい息で一ふきすれば、どんなに燃えたたないでこまっている焚火も、ぱっともえあがるのです。時によると、人をえらんでいく人も背中にのせ、一とびしてやることもありました。…人にすかれるという楽しさ、それ以上にまたほかの人をすきになるという楽しさが、ユースチスが世をはかなむ気もちを救ったのです(楽しさというものは、ユースチスにとってまったく新しい経験でした)。…夜になって、じぶんが湯たんぽがわりに使われないような日は、こっそりと野営地からはなれていって、森と海の間にきて、蛇のようにとぐろをまいて、ひとりで寝ました。そんな時に、ユースチスがとてもびっくりしたのは、リーピチープがいつも変わらずに、なぐさめにやってくることでした。…そしてネズミは、ユースチスの身におこった出来事は、運命の神の車のめぐりをよく示した心うたれる例だと話してきかせ、もしナルニアのじぶんのやしきにユースチスをむかえいれたなら(といってもリーピチープのやしきとは、家ではない穴ですから、竜のからだはもちろん、その首もはいらないでしょう)、探検家や王や貴族や騎士、詩人や恋人や天文家や魔法使いの百人をくだらない人々が、いまをさかりの人生からどん底の非運におち、そのなかから多くの者が、ふたたび運をもりかえして、それからずっと幸せにくらしたという例を、見せてあげようと、いいきかせました。こういうなぐさめは、その時にはあまりきかないように思われますが、その親切は身にしみて、忘れられませんでした。」こうして、ユースチスは少しずつ変わっていったのです。
 何日かたったある明け方、エドマンドは人の気配に起き上がって森の方へ行ってみました。するとそこに、人間に戻ったユースチスがいたのです。ユースチスはどのようにして人間に戻ることができたのか、それは次回のお楽しみにしましょう。
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